No.14 アレーナとロミオとジュリエット
イタリアという国は2000年以上も前の歴史がそこかしこに溢れている国です。そして、その風景は多分何世代か前の人々が見ていたものと全く違わないかもしれないのです。そう思って見ると全てをある種の感動を持って眺めることになります。
イタリア第二の川アディーティ川をがゆったりと流れるベローナの街。その川辺の小高い丘には曇り空を背景に静かに佇む城が見えていました。

ローマ帝国の植民地であったこの街にはローマと同じ時空を封じ込めた場所があります。
建物や広場の下にローマ時代のカラフルな石畳みがそのまま保存されていて、ガラス張りの丸い井戸のような覗き窓から見ることができるのです。
まるで地下都市の入り口を覗き込んでいるようで、今にも歩いている人の声が聞こえてきそうな気さえしてきます。

ヴェローナと言えばロミオとジュリエットの街。シェークスピア原作ですが、私は黒髪で可憐なジュリエット、オリビア・ハッセイの映画を思い出します。
バルコニーから外に向かって
「あ〜ロミオ、ロミオさま。。。あなたは何故にロミオなの・・・」と囁くシーンは何度見ても胸キュンものでした。

ジュリエットの家と称する建物は有名な観光名所で、たくさんの人が狭い中庭でひしめき合っていました。
バルコニーも映画とは違って申しわけ程度のお粗末なもの。
ジュリエットは映画の「フーテンの寅さん」と同じかもしれません。あまりにも有名であるために、葛飾柴又には寅さんが実際に住んでいたのだと錯覚してしまいます。
ロミオとジュリエットのモデルは実在したらしいけれども、ロミオとジュリエットが実在したわけではありません。でもまさしくこの家は「ジュリエットの居宅」なのです・・・不思議ですが、自然に受け入れてしまいます。

また、ヴェローナにはローマのコロッセオと同じ時代に建造された古代ローマの遺跡アレーナがあります。その外観はローマのものと違って、どこかしら親しみ易く普段着の街にしっくり溶け込んいます。

歴史ある遺跡でもあるベローナなのですが、息吹を感じる現代の街として違和感なく受け入れることができるのは驚きです。
きっと今あるこの風景は私たちの何代も前の人々が見ていた景色と同じなんだろうと思います。

このアレーナでは毎年夏に屋外オペラ、「べローナ国際音楽祭」が開催されています。
古代ローマの遺跡でオペラ・・何とお洒落なんでしょう。
しかも、世界中の人々が高く評価する素晴らしいオペラが演じられます。このチケットは日本からも予約できるということですから、私もいつか観劇できたらと夢見ています。



ミラノのスカラ座は、14世紀にベローナの領主であったスカラ家の名に由来しています。
スカラ家の名門貴族の娘ベアトリーチェ・スカーラがミラノのヴィスコンティ家に嫁ぎ、その名前を拝したのがオペラの殿堂スカラ座と言うわけです。
スカラとはイタリア語でステップ(階段)のことで、紋章にその階段を模ったゴシック様式の廟は本当に見事です。
お墓にしておくのは勿体無いと言ったら怒られそうですが・・
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